「大工さんが足りない」「工務店がなくなった」は本当? なにが困るの
家の新築やリフォームを検討しているときに、「大工さんが減っている」「大工さんが足りない」などと聞くことがあります。
また家を建てた工務店が廃業などでなくなった場合、トラブルとなっているケースも実は少なくありません。
家づくりの現場で、一体なにが起こっているのでしょうか?
この記事では、どうして大工さんが減っているのか、また家を建てた工務店が廃業などでなくなった場合どうなるのかなどを解説します。
よい大工さんのいる工務店の見つけ方も紹介しますので、これから新築やリフォームをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.20年間で半減! 「大工さんが減っている」
まずは、実際どれくらい大工さんが減っているのかを紹介します。
(1)大工さんはどのくらい減ったの?
画像引用:大工就業者数の推移(国土交通省)
国勢調査によると、大工さんの人数は2000年時点では64万7千人であったのが、2020年には29万8千人と、この20年間で約54%も減少していることがわかります。
これは、建設業従業員全体の減少率(約37%)と比較して、大きなものとなります。
大工さんの就業者数がもっとも多かった1980年の93万7千人と比べると、およそ3分の1に減った計算です。
(2)どうして減ったの? 大工さんが減った背景
大工さんが減ったことには、3つの原因が考えられます。
①大工さんの高齢化と後継者不足
もっとも大きな原因は、大工さんの高齢化です。
前述の表からもわかるように、60歳以上の大工さんが占める割合は、1990年までは30歳未満の大工さんの割合よりも下回っていました。
それが1995年の国勢調査時には逆転し、それ以降は差が開く一方です。
2020年の調査時には30歳未満の大工さんの割合が7%であるのに対し、60歳以上の大工さんの割合は43%にも達しています。
年を取り引退する大工さんが増える一方、後継者となる若い大工さんが増えないままに高齢化が進んでいることがわかります。
②技術伝承の問題と規格住宅の増加
大工さんが後継者不足に悩むことには、技術伝承が難しいことが理由として挙げられます。
ひと昔前まで、大工さんの仕事は「技は盗むもの」といった職人かたぎの考え方が主流でした。
しかしそういった古いやり方は、今の若者には受け入れてもらえません。
さらに近年は工場である程度パーツをプレカットし現場で家を組み立てる規格型注文住宅や「建売住宅」が増えてきました。
その結果、一から現場で材料を切り出して住宅を建てる「完全自由設計型の注文住宅」でじっくり技術を育ててきた腕のよいベテランの大工さんから、今の若い職人さんが昔ながらの技術を教わる機会が減っているのです。
③大工さんの経済状況
大工さんは、企業に属するよりも個人事業主の「一人親方」や5人未満の小規模事業として生計を立てている人が多いことが特徴です。
そしてそういった大工さんの収入は、決して多くありません。
2020年(令和4年)の全国の大工さんの平均年収は約406.7万円となっており、これは給与所得者の平均年収458万円よりも約11%低い金額です。
また大工さんは会社員ではなく社会保険などの恩恵を受けにくい個人事業主やフリーランス(一人親方)として働く人が約65%と多くなっています。
こういったことも「大工さんになりたい」と考える若者の減少につながっているのです。
参考:厚生労働省|大工(jobtag)、国税庁|令和4年分 民間給与実態統計調査
2.家を建てた工務店が廃業でなくなった! が増えている
大工さんが減っているのとあわせ、家を建ててもらった工務店が廃業するなどしてなくなって困る人が増え、問題となってきています。
家を建てた工務店がなくなると困る理由や、その背景を解説します。
(1)工務店がなくなることの影響は?
家を建てた工務店がなくなると、さまざまな問題が発生するリスクがあります。
もっとも大きな問題は、アフターサービスを受けられなくなるため、不具合が発生したとしても対応してもらえなくなることです。
住宅は、新築後10年は品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による「瑕疵(かし)担保保険」がついており、以下の部分についてはたとえ家を建てた工務店がなくなっても保証を受けられます。
- 住宅の柱や壁などの、構造耐力上主要な部分
- 屋根など雨漏りを防ぐ部分
しかし住み始めてからそれ以外のトラブルに気がついたときに、工務店がなくなっていれば、相談して解決するすべがありません。
結果的に費用を自己負担したうえで、別の工務店に修理を依頼せざるを得ないこともあるのです。
(2)どうして突然廃業したの? 工務店がなくなった背景
工務店が突然なくなったときには、4つの理由が考えられます。
①経営者の高齢化と後継者不足
工務店は広い営業エリアを持つ大規模な企業は数が少なく、ほとんどは小さなエリアを営業範囲として地元密着型で事業をおこなっている小規模事業者です。
そして小規模事業者は、経営者の高齢化が進んでも後を継ぐ人材がおらず悩んでいるところが多く、それは工務店も例外ではありません。
若い従業員を募集しても、若者は大手志向が強かったり、大手と比較しての待遇の悪さを敬遠したりするため、後継者が見つからず事業を閉じてしまうのです。
②建築規制の複雑化
近年の建築業界は、環境への配慮や住宅の安全性を高めるなどの目的で、建築基準法などの改正が相次ぎ規制が複雑化しています。
法令の解釈や運用には自治体ごとに違いもあることから、小規模な工務店にとって、それら膨大な法令を把握し、適切に対応するのは簡単なことではありません。
法令を遵守し対応するためには、高度な専門知識や社員教育が必要で、そのためには人件費や教育コストもかかります。
結果的に工務店の経営を圧迫し、撤退を余儀なくされることもあります。
③大規模ハウスメーカーやホームセンターの台頭
近年住宅業界では、全国展開する大手ハウスメーカーやホームセンターが、低価格なサービスを展開し、シェアが拡大しています。
大量仕入れによるコストダウンで規格型住宅を売り出し、資本力を活かして宣伝・広告し、ブランド力をもとに集客しているのです。
一方、地元密着型の小規模工務店は、こうした大手に対向するだけの経営資源を持ち合わせていないケースが多いのが現状です。
価格面で太刀打ちできず、経営状況が悪化し廃業を検討せざるを得なくなるのです。
④大工さんが減ってしまった
工務店を続けたくても、大工さんが減ってしまったことで家づくりができなくなる場合もあります。
日本の住宅は「木造軸組工法」と呼ばれる建築工法が主流で、大工さんの力なくしては家を建てることができません。
しかし冒頭でご紹介したように、大工さんの数は年々減る一方です。
大工さんの減少とそれに伴う大工さん不足は、工務店にとって死活問題となっているのです。
3.大工さんが減っていたり工務店がなくなったりするとなにが困るの?
大工さんがいなくなると、具体的にどのようなことが困るのかを解説します。
(1)工務店がなくなり本当に大変なのは新築ではなくリフォーム
工務店がなくなることでもっとも困るのは、大切に長く住んできた家が古くなり、リフォームが必要になったときです。
家のことをもっとも熟知しているのは、当然ながらその家を建てた工務店です。
そのためリフォームを検討するときに、依頼先として真っ先にその工務店に依頼したいと考えるのが自然です。
しかし工務店がなくなってしまっていると、依頼先を一から探さなければならなくなってしまいます。
また工務店がなくなったことで、当時の設計図書などが手に入らなければ、リフォームに際して再度図面からすべて作り直すことにもなりかねないのです。
(2)国の空き家対策と大工さん不足によるリフォーム不能
国は現在、空き家対策として、空き家の有効活用やリフォームを推進しています。
しかし大工さん不足により、リフォームが思うように進まないのが現状です。
リフォームの中には、立地や工法により、手間のかかる職人技が必要とされるケースも多く、そういった空き家は対応できる大工さんが限られてしまいます。
そのためなかなか空き家のリフォームが進まずに、長期間放置されるケースも少なくありません。
その結果、ますます空き家の老朽化が進んでしまい、地域の居住環境や景観に悪影響を及ぼしています。
4.よい大工さんのいる工務店の見分け方
大工さんが減り続けているなか、よい大工さんのいる工務店はどのように見分ければよいのか、ポイントを7つ紹介します。
(1)地元で長く続いている
まずは、地元で長く続いている、地域密着型の工務店を探しましょう。
地域密着型の工務店は、クチコミで評判が広がりやすいことが特徴です。
そのようななか、地元で長く続いているということは、顧客からの信頼が厚く、質の高い家づくりをおこなってきた証といえます。
また、地元で長く続いている工務店は、職人や業者とのネットワークが強く、優秀な大工を確保しやすいこともメリットです。
地域に根差した工務店を選べば、優れた大工さんを見つけやすくなるでしょう。
(2)新築だけでなくリフォームも多く扱う
新築工事だけでなく、リフォームも多く手がける工務店は、幅広い経験とノウハウを持つ大工さんを抱えている可能性が高くなります。
新築とリフォームでは、大工さんに求められる技術や知識が異なります。
特にリフォームは、設計図通りに施工する新築と違って、対象箇所の状況を見極めたうえで適切な工法を選択しなければなりません。
そのため、リフォーム経験が豊富な工務店では、さまざまな現場で培ったスキルを持つベテランの大工さんがそろっていることが多いのです。
(3)建設業の許可を持っている
よい大工さんがいる工務店を探すときには、建設業の許可を取っているかも見極めポイントになります。
家の工事をする事業者は、請け負う工事が500万円未満であれば、建設業の許可は不要です。
しかし家を建てるためには、500万円以上かかるのが一般的です。
つまり建設業の許可を得ている工務店は、それだけ大規模な家づくりに慣れ家の構造などに熟知した大工さんがいる証といえます。
検討しているのがたとえ小規模なリフォームであっても、建設業の許可を持っている工務店であれば、安心して任せられるでしょう。
(4)請負業者賠償責任保険に加入している
工務店を探すときには、建設業の許可とあわせて「請負業者賠償責任保険」への加入の有無もチェックすることをおすすめします。
請負業者賠償責任保険とは、工事中に対人・対物の事故が起こった場合に備えるための保険です。工事現場だけではなく、資材置き場などで事故が起こった場合でも、補償の対象となります。
請負業者賠償責任保険に入っていると、大工さんは安心して仕事ができるため、よい人材が集まりやすくなるのです。
(5)リフォーム瑕疵保険に加入している
「リフォーム瑕疵保険」に加入しているかどうかも、工務店の良しあしを判断する材料になります。
リフォーム瑕疵保険とは、リフォーム工事後の一定期間内に瑕疵(欠陥)が発見された場合に、保証される制度です。万が一、手抜き工事や施工不良が見つかったときには、修復費用が補償されます。
この保険に加入するには、工務店の技術力や施工管理体制についての一定の基準を満たさなければなりません。
そのため加入している工務店は、一定の品質基準をクリアしていると考えられ、経験豊富な大工さんがきちんとした工事をしている可能性が高いでしょう。
(6)現場がきれい
工事現場がきれいであるかどうかを見ると、その工務店の仕事ぶりがわかります。
効率的で質の高い仕事をするには、現場がきちんと整理整頓されていることが重要であるためです。
現場がきれいに片付いているようなら、そこで働く大工さんは、自分の仕事に誇りを持ち、プロとしての自覚を持っていると考えられます。
可能であれば、その工務店が現在工事している現場を見せてもらい、資材の置き方やゴミの始末を確認してみることをおすすめします。
(7)安さを売りにしない
工務店を探すときには、つい「安さ」を求めてしまいがちです。
しかし、適正価格を大幅に下回るような価格を提示し、安さを売りにしている工務店は避けるのが無難です。
優秀な大工さんは、自分の技術力に見合った対価を求めるものであるためです。
適正な報酬を得られない現場には、腕利きの大工さんが集まることはありません。
大工さんの技術を正当に評価している工務店は、安さを売りにすることはないのです。
5.まとめ
近年、大工さんも工務店も高齢化や後継者不足などの問題で、どんどん数が減少しています。
そのようななか、腕がいい大工さんがそろった工務店を探すのは、簡単なことではありません。
今回ご紹介した内容を参考に、信頼できる大工さんがいる工務店をぜひ探してみてください。
なお、浅野工務店では、足立区を中心に新築・リフォームを問わず理想の家づくりのお手伝いをしています。
1967年創業以来、50年以上地元密着で事業をおこなっていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
- 【最終更新日】2024年07月19日 10:22:51
- 【投稿日】2024年06月25日 10:31:24