14.安心して暮らしたいと建て替えをされた田中様
用事を済ましてご近所を歩いていると、田中様がご自宅の前で腕組みをしてらっしゃるところに出会いました。
「おっ、ちょうどいいところに来たね。前から気になっていたことがあるんで、相談にのってくれ。この家、傾いてるんだと思うんだけど」
ご一緒に家の周りを歩いてみると、確かに道路側から奥に行くにしたがって下がっていました。大げさに言うと斜めになっているような状態です。
「なるほど、こういうことですね・・・」
「そうなんだ。なおるだろうか?」
「傾きをなおすには、基礎にウレタン樹脂を注入したり、一度ジャッキで上げたりといった方法もありますが、費用が結構かかります」
「そうだろうな・・・」
困ったご様子なので、確認のためにお尋ねしてみました。
「家の傾きのほかに、気になっていることはありますか?」
「そりゃあ、キッチンも古いしお風呂も寒い。2階も・・・。家を建ててから35年も経つんだ。そりゃあ、いろいろあるよ」
苦笑いしながら次々と出てくるので、お尋ねした私のほうがあわてました。
「田中さん、ちょっと待ってください。それらを、全部なおしたいんですか」
「自分たちも年をとって、もう70半ばになる。これから先の生活に備えて、今からできることは準備しておきたいんだが」
「わかりました。そういうお考えでしたら、建て替えも考えたほうがいいかもしれませんね。たとえば、ご予算はどのぐらいで考えてますか?」
「どのぐらいかかる?」
「建て替えようとすると、今の家の解体費用もありますし、建物以外にも外構費(門扉や堀)や登記の費用など、2千万円ぐらいかかるのではないかと思います。どうですか」
「2千万円でできるなら、建て替えた方がいいなあ。その方が、この先安心して暮らせるからね」
「わかりました。もちろん地盤調査をして、地震に対応した家にします。また、手すりをつけたり段差をなくすなど、お二人がお元気で長くお住まいになれるようにしていきたいですね。足立区では、耐震に伴う解体工事には助成金が出る場合がありますし、手すりをつける場合、予防給付金や介護保険も利用できるケースがありますので、それらの手続きも含めてご相談していきたいと思います」
(足立区の助成金については、66頁を参考にしてください)
奥さまはリフォームで十分だとお考えのようでしたが、ご主人が今後の生活のことをいろいろご心配なさって建て替えに積極的でした。無事に完成したときには、「これで死ぬまで安心だ」とホッとなさっていたのが印象的でした。
「建て替えとリフォームと、どっちがいいだろう?」とおっしゃる方には、家の傾きを気になさっている方が結構多いです。田中様のように、家の傾きがきっかけになってリフォームを考え、結果的に建て替えになるケースもあります。あるいは、思い切って建て替えようというご相談であっても、家の傷み具合やご家族のご都合、ご予算などから、リフォームをおすすめする場合もあります。
- 2016年12月5日
- カテゴリー : 住まいの本