43.助成金を利用して工事をされた高橋様
事務所で仕事をしていると、ご相談の電話がありました。
「高橋といいます。困ってるんで、相談にのってくれるところはないかと探していたら、渡辺さんがお宅を紹介してくれたんだよ」
以前に、建て替え工事をされた渡辺様からのご紹介でした。
「お近くですので、もしよろしければこれからうかがいます」
高橋様のお家は、建てられてから30~40年、経っているようです。
「どんなことにお困りですか」
「夫婦二人きりなんだけど、ばあさんが病気になっちゃって。足が不自由になってしまったから、今は入院しているからいけど、家に戻ってきても生活できないんじゃないかと心配で。やつぱり、建て替えないとだめだろうな。でも、これからのこともあるから、できたら今の家をどうにかできないかと思うんだが」
「ご心配ですね。足が不自由になられたということですが、車いすが必要でしょうか」
「いや、手すりにつかまれば歩けるようになったんだ」
「そうですか、よかったですね。では、家のなかを拝見させていただいてよろしいですか」
もう一度、玄関に戻り、居間、台所、トイレ、お風呂場、そして2階と、順序よく見ていきました。昔の家なので、階段は急勾配ですし、玄関も狭いです。手すりの設置場所など、細かい確認が必要なようです。
「高橋さん、必要なところに手すりをつければ、建て替えなくても大丈夫ですよ。あとは、敷居や、お風呂場の段差をなくす工事をしましょう」
「それを聞いて安心したよ。ひとりで考えてると、悪いことばかり浮かんできて。相談してよかった。で、いつから工事をしてくれる?」
「そうですね、できるだけ急いで工事をするようにします。その前に、奥さまは介護保険の認定を受けていらっしゃいますか。手すりや段差をなくす工事には、足立区や介護保険から助成金が出ます。そのご相談や、手すりをつかまりやすい位置に付けるために、奥さまの身長をお聞きしたいのですが」
「認定は受けていたと思うけど、身長までは・・・。ケアマネージャーなら知っていると思うから、浅野さんに電話をしてくれるように頼んでおくよ」
「わかりました。ケアマネさんからの連絡を待って、高橋さんにご報告するようにします。それでは、手すりをつける場所や、段差の工事が必要な箇所の図面と、見積書をお持ちします。助成金は、工事が終わる前に申請し、自己負担分はお支払いいただきます。また、入金までに日数がかかりますが、よろしいでしょうか」
「わかった。おまかせするよ」
本当に安心されたようで、はじめのお電話のときとは違って、お元気な声でした。手すりの高さですが、建築基準法の教科書のようなものがあり、80センチと書いてあります。でも、小柄な方ですと、80センチでは握りにくいです。そのため、高橋様に奥さまの身長をお聞きしたわけです。本来なら、手すりを使う方に実際に立っていただき、高さを調整していきます。太さも何種類かありますので、手の大きさにあった手すりを選びます。また、利き手は右か左か、あるいは手がご不自由な方もいらっしゃいますので、お客さまが使いやすいように設置します。
足立区では、介護の認定を受けていれば介護保険の助成金が利用できるほか、予防給付金を利用できる場合もあります。条件によって金額が違いますので、67頁を参考にしてください。段差については、敷居部分、台所やトイレの扉のドア枠が、そこだけ少し高くなっています。それをなくすには、ふたつの方法があります。
ひとつは、傾斜をつけて床と敷居の高さをそろえます(48頁の写真を参考にしてください)。もうひとつは、現在の床の上に新しい床を載せて高さをそろえます。こちらは、床も丈夫になるという効果もあります。
お風呂場は、古いお家ですと脱衣所とタイル張りの床とは、かなり高さが違うことが多いです。そんなときには、タイルの床の上に樹脂製のすのこを載せます。これだけで、ほとんど段差がなくなります(101頁の写真を参考にしてください。段差の解消にも、介護保険や予防給付金での助成金があります。ただ、何か所もの段差をなくすには助成金だけでは足りないことが多いです。
- 2016年12月7日
- カテゴリー : 住まいの本